本研究は、健康状態やADL、易脱水性等をふまえた高齢者に実践しやすい効果的な脱水予防・熱中症予防プログラムを提案・検証することと体水分動態を考慮した脱水アセスメント法の確立を目的とした。1年目(H22年度)は、基礎的データとなる高齢者の体内水分量を主に部位別生体電気インピーダンス法(SBIA)にて測定し、加齢変化や自立度、体力等との関連を検討した。その結果、体内水分量については細胞内液量が加齢と共に減少する一方で、細胞外液量はあまり減少しないことや筋肉量減少が細胞内液減少に関連することが確認された。また虚弱高齢者では自立高齢者に比べ、細胞内・外液量共に減少傾向にあり、虚弱高齢者は易脱水傾向であると推測された。従って、体内水分量は飲水行動だけでなく、筋肉量との関連が深いと考えられるため、脱水予防のためにも筋肉量の維持が必要であると示唆された。2年目(H23年度)は、1年目のデータを補完した。合わせて、飲水行動を含む生活習慣を調査し、脱水予防・熱中症予防プログラム作成し、地域の健康教室で試みた。3年目(H24年度)は、易脱水性を正確かつ簡便に判定する方法を開発するために、SBIAによる体内水分量と皮膚・口腔乾燥との関連性を検討した。特に虚弱高齢者では、腋窩や手首の皮膚水分と細胞内・外液との有意な関連がみられ、腋窩や手首の皮膚水分、いわゆる皮膚乾燥度が易脱水性の判定項目として有用である可能性が示唆された。
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