高齢者福祉施設では、認知症高齢者へのケアの困難さ、勤務状況の過酷さ、ケアスタッフ数の確保の困難などの問題が発生している状況がある。この状況においては、勤務し続けているケアスタッフへの負担が大きくなり、その結果、身体的・精神的に疲弊している状況が継続することによって質の高いケアを提供することに困難を極めると考えられる。そこで、研究者はグループ回想法の高齢者への効果のみならず、ケアスタッフ(回想法実践者)への効果にも期待している。今後、回想法実践者がその効果を自分自身で実感し、バーンアウト軽減効果を向上させるためにも、回想法実践能力の向上をとらえられる尺度が必要である。回想法実践能力を客観的に把握することは、スタッフ教育効果にも生かされる可能性があり、より質の高い高齢者ケアの提供に貢献できるのではないかと考える。 本研究の目的は、(1)認知症高齢者を対象にしたグループ回想法を実施した者の回想法実践能力を客観的に捉えられる尺度を開発する、(2)回想法実践能力尺度を開発する過程の中で専門職的自律性やバーンアウトなどとの関連を明確していくことの2点である。 平成22年度は目的(1)を中心にして、認知症高齢者を対象にしたグループ回想法を実践している、研究協力を承諾しているという選定条件を満たす者に協力を依頼し、グループ回想法を2つの高齢者福祉施設で行った。グループ回想法は、1クール8回で行い、時系列にテーマと道具を設定して行った。また、その実施場面を参加者の同意を得た上でビデオ録画した。今後は、ビデオ録画された回想法実施場面について観察調査を行う予定である。 なお、本研究結果は平成23年度以降に学会発表や学会誌へ投稿する予定である。
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