高齢者福祉施設では、認知症高齢者へのケアの困難さ、勤務状況の過酷さ、ケアスタッフ数の確保の困難などの問題が発生している状況がある。この状況においては、勤務し続けているケアスタッフへの負担が大きくなり、その結果、身体的・精神的に疲弊している状況が継続することによって質の高いケアを提供することに困難を極めると考えられる。そこで、研究者はグループ回想法の高齢者への効果のみならず、ケアスタッフ(回想法実施者)への効果にも期待している。今後、回想法実施者がその効果を自分自身で実感し、バーンアウト軽減効果を向上させるためにも、回想法実践能力の向上をとらえられる尺度が必要である。回想法実践能力を客観的に把握することは、スタッフ教育効果にも生かされる可能性があり、より質の高い高齢者ケアの提供に貢献できるのではないかと考える。 本研究の目的は、①認知症高齢者を対象にしたグループ回想法を実施した者の回想法実践能力を客観的に捉えられる尺度を開発する、②回想法実践能力尺度を開発する過程において専門職的自律性やバーンアウトなどとの関連を明確していくことの2点である。 平成24年度は、23年度に観察調査によって開発された回想法実践能力尺度の信頼性、妥当性をアンケート調査、観察調査結果により検証した。アンケート調査では質問式尺度としての信頼性および妥当性を、また、観察調査結果では観察式尺度としての信頼性を検証した。 本研究成果は、グループ回想法実施者が質問式尺度として使用することで自分の実践内容を振り返り工夫点を見いだすことに活かされると考える。また、施設管理者などが観察式尺度として使用することでグループ回想法実施者を評価した結果を教育的関わりに活用できるのではないかと考えられる。 なお、本研究結果は今後も学会発表や学会誌へ投稿する予定である。
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