本研究は、高齢者ケア施設で働きながら、日本の看護師資格取得をめざす外国人看護師が、患者への質の高い看護の提供と、日本人スタッフとの円滑な協働をおこなうための教育プログラム開発を目的としている。経済連携協定(EPA)により来日して、中国地方の山間部都市の介護老人福祉施設で働きながら、介護福祉士資格を取得したインドネシア人女性1名、外国人看護師(介護士)受け入れ責任者(管理者)、日本人スタッフ(介護職)2名と半構成的面接を行った。インタビュー内容は、1)入居高齢者のケア時にコミュニケーションで困っていること(困ったこと)はどのようなことか、2)ケアを円滑に実施するために、コミュニケーション上どのような工夫をしているか、3)実施したことの報告以外に、自分の意見や考えを伝えられているか、4)外国人スタッフと一緒に働くことでコミュニケーションで困ったこと、5)高齢者とその家族の反応で困ったことはあったか、などである。その結果、外国人介護士は、高齢者の話をゆっくり聞く、高齢者が話し始めるのを待つという対応をしていた。日本人スタッフは、受験勉強と仕事を覚えることに努力する姿をみて、自分たちも一層の努力が必要と感じていた。管理者は、施設で仕事を始める前から地元のマスメディアで紹介して、外国人がスタッフとして働き始めたことをオープンにして、施設入居者以外にも地域住民へも周知をするという方法をとっていた。また、外国人が最も苦手とする日本語で書くという能力育成よりも、日本語で話すという能力育成を重視していた。施設ケアではあまりたくさんの語彙を必要としないということも言葉や仕事を覚えるのに役立っていた。しかし、今後看護師資格を取得するためには多くの専門用語や語彙を覚える必要がありそのリソースを外国人介護士は求めていた。今後は、ケア場面の参加観察を行って、コミュニケーションの様相を明らかにしたい。
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