研究概要 |
本研究は、これまで健康問題として注目されていなかった冷え性高齢者の生理的特徴を明らかにするとともに、身体的・精神的苦痛の緩和につながるケア技術を構築し、高齢者の生活の維持・向上に貢献することを目的とする。本年度は以下の研究を実施した。1.在宅高齢者を対象にした質問紙による冷えの実態調査:在宅高齢者224名(男性:96名、女性:128名)に対して生活習慣、健康状態、ADL、冷えの症状等について調査した。対象者の平均年齢は73.0±5.4歳(男性:72.7±5.1歳、女性:73.2±5.7歳)であり、「冷え症」の診断基準(寺澤,1987)により冷えのある高齢者34名と冷えの無い高齢者190名に分類された。2群間に年齢や普段の体温に違いは認められなかったが、BMIは冷えのある高齢者の方が有意に低かった。また、在宅高齢者においても先行研究で述べられている通り偏食、飲酒、運動の有無が冷えの要因として示唆された。また、冷えに伴い、凍瘡やしびれ浮腫など循環状態に関連した症状や倦怠感、疲労感の有無、感冒のかかりやすさ等が出現していることも明らかとなった。2.冷えの生理的特徴及び症状緩和のケア技術の検証:冷えの部位を下肢に限定し、末梢の循環状態や体温、温・冷覚の感覚機能等を指標に、健康成人を対象として、現在、生理的特徴を検証している。次年度は、質問紙による実態調査の結果を、学会発表と論文投稿により公表する予定である。また、下肢に冷えのある高齢者を対象に、冷えの生理的特徴とケア技術の有用性を実験により検証する。
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