本研究の目的は、高次脳機能障害者のセルフケアの再構築を促す看護介入モデルの試案を検証し看護介入モデルを構築することにある。本モデルは注意障害、観念失行、半側空間無視、自発性の低下に対する介入の順序性と環境調整及び主意的役割の活用という二つの介入方法を提示し期待できる効果の程度について示したものである。 介入の順序性としては、認知の基盤である注意障害に対して最初に介入することで他の高次脳機能障害への介入の準備が整うことが予測される。さらに、環境調整は注意障害に、主意的役割の活用は、自発性の低下にもっとも効果的であると予測される。本研究においては前述した介入の順序性と介入方法について検証する。 平成22年度は、準備段階として注意障害患者の食事場面における視覚・聴覚刺激を減少した環境調整の有効性を検討した。その結果、注意障害患者に対する視覚・聴覚刺激を減少した個室環境は注意機能の持続や配分に有効であり看護介入として確立できる可能性が示唆された。また、注意障害の改善に伴い抑制障害や半側空間無視の改善を認めた。平成23年度は、自発性の低下をきたした患者に対して、入院前に患者が最も重視していた役割、つまり主意的役割を用いて介入することの効果について検討した。その結果、主意的役割の活用は患者の自発性の向上を促すという結果を得た。 平成24年度は、平成23年度に引き続き自発性の低下をきたした患者に対して主意的役割を活用した看護介入を実施しその効果について検討した。また、注意障害により排泄セルフケア不足をきたした患者に対しても、注意の持続を維持するための方法として主意的役割の活用を試みた。その結果、注意の持続が可能となり患者は排泄セルフケア行為を獲得した。このことから、高次脳機能障害者のセルフケアの再構築を可能にする看護介入として、患者の主意的役割を用いた看護介入の効果が示唆された。
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