研究課題
基盤研究(C)
変形性関節症(OA)に伴う疼痛は、患者の日常生活の活動性及び質を著しく低下させる。本学運動器外科学教室では、膝OAの病態の分子メカニズムを明らかとする目的で膝OAの進行とともに発現量が変動する遺伝子の網羅的解析を行ってきた。その結果、病態の進行とともに関節液中での発現量の増大するタンパクの一つとしてオステオポンチン(OPN)を同定した。本研究期間において、ヒト関節液中のOPN量は、膝受傷後早期に一過性に増大することを明らかとした。また、受傷後1ヶ月以内において、関節液中OPN量は、膝疼痛レベルと有意な正の相関を示すことを明らかとした。関節液中に存在するOPNによる疼痛発症のメカニズムを検討するため、関節の炎症とOPN量との相関を検討した結果、炎症に伴う関節液量の増加と、関節液中OPN濃度に有意な正の相関があることを明らかとした。以上の結果は、関節液中に存在するOPNが関節腔内で炎症性サイトカインとして機能している可能性を示唆している。興味深いことに、膝受傷後1ヶ月以上の、急性炎症の所見がみられない患者由来の関節液を用いた検討では、トロンビン切断型のOPNの量と運動負荷時の関節疼痛の重症度の間に有意な負の相関があることを明らかとした。この結果は、関節液中のOPNが痛みに対する感受性を規定している可能性を示唆しており非常に興味深い。
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