研究課題
帯状疱疹の際の末梢の病変部位が痛みへの関与について検討した。単純ヘルペスウイルス(HSV)皮膚感染モデルは、帯状疱疹様の皮疹を生じる。そこで、HSVのマウス側腹部感染実験系で得られる病変の程度(水疱、びらん、小潰瘍、帯状皮疹)を、皮膚の急性期から回復期の皮膚および神経終末の形態学的解析を実施した。その結果、皮膚病変の重症度に応じて、その周辺皮膚のC線維分布密度が10倍以上に増加していた。このように、HSVの病変の進行に伴い神経終末数が増加することは知られていない。すなわち、神経終末数が増加することは、痛覚や触覚の受容体の増加を示唆し、皮膚病変近傍では痛点や触覚を感じる点の増加し、痛覚過敏などに関係すると推定された。その機序を解析するため、HSV抗原の存在と神経終末を増加させる神経成長因子(NGF)の分布について組織化学的に検討した。その結果、HSVの抗原分布と重なるように、皮膚のケラチノサイトにNGFの発現を認めた。このことから、HSVが皮膚に感染して、ウイルス感染が広がる過程で、ケラチノサイトからNGFが産生され、そのNGFが皮膚に至る神経終末から取り込まれ、神経終末数を増加させていることが示唆された。また、一方、皮膚が潰瘍化した部位では、神経終末数が非常に少なくなっていた。このように、皮膚の神経終末数が増加する部位と、瘢痕化によって神経終末数が減少することが認められた。以上の様に、HSV皮膚感染モデルでは、帯状疱疹患者で認められる様な、痛覚の過敏な部分とそうでない部分がモザイク状に混在する様であるが、その様な病態を説明できる皮膚の神経終末の分布状況をマウスで確認した。本研究で、帯状疱疹の際の痛みは多彩であり、その後の帯状疱疹後神経痛に関わる機序に関して、BDNFの関与だけでなく、皮膚病変にも、痛みに関わる因子があることを確認した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Cornea
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