研究課題
今なお、モルヒネ類にかわる「夢の鎮痛薬」は実現していない。そこで本研究では、鎮痛作用を発揮するオピオイド受容体ではなく、逆の疼痛受容体、すなわち痛みシグナルを増強するノシセプチンおよびその受容体を阻害するアンタゴニストの設計という、既存と全く異なる新規メカニズムに基づく鎮痛薬の創製を目指す。3年計画の初年度である今年度は、まず、ノシセプチン受容体の丸ごとアラニンスキャン変異体の発現プラスミド作製を行った。特に、受容体構造の維持や活性化構造変化に重要だと考えられる7つの膜貫通領域全てのアラニンスキャン変異体の構築に取り組んだ。既に、第5膜貫通領域の27アミノ酸残基の置換は終了したため、6つの膜貫通領域を対象にアミノ酸を1つずつアラニンに置換した発現プラスミドを作製した。こうして7つの膜貫通領域に存在する全150残基全てのアラニンスキャン変異体の作製に成就した。次に、ホ乳類培養細胞を用いた変異体発現による、結合および受容体活性化試験に取り組んだ。作製したアラニンスキャン変異体を、順次、アフリカミドリザル腎由来COS-7細胞で発現し、トリチウム[3H]標識ノシセプチンをトレーサーとして用いた競合結合試験を行った。さらに、受容体活性化の指標であるGTPγS結合試験により、活性を評価した。その結果、変異なしの受容体と比べると、多くの変異受容体において受容体タンパク質発現量の減少が見られた。また、リガンドが変異なしの受容体同様に強く結合するにもかかわらず、受容体活性化能がかなり弱い一群の変異があるという興味深い結果が得られた。これは、TM間で綿密な相互作用のネットワークを形成し、受容体の安定な構造を保つ役割をしているためだと考えられた。さらに、Cys(Npys)含有アンタゴニストのアフィニティラベリングによる結合部位解析に取りかかった。まずは、申請者らが見出した純アンタゴニストペプチドのN端側にNpsy基を導入した。これを用いて結合試験を行ったところ、確かに受容体にリガンドが共有結合で標識されることが判明した。
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