研究課題/領域番号 |
22600008
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
西森 利数 宮崎大学, 医学部, 教授 (20112211)
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研究分担者 |
池田 哲也 宮崎大学, 医学部, 准教授 (20264369)
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キーワード | 疼痛 / ペプチド / 脊髄 / 神経薬理 |
研究概要 |
本年度は疼痛系に対する新規タキキニンペプチドであるヘモキニン-1(HK-1)のC-末端領域とN-末端領域の寄与について、サブスタンスP(SP)のそれと比較しながら解析を進めた。 実験には、HK-1およびSPのN-末端領域(N-HK-1およびN-SP)またはC-末端領域(C-HK-1およびC-SP)からなるペプチドを作製し、これらのペプチドを留置カテーテルを介してラットの髄腔内に投与し、それぞれのペプチド効果について検討した。 足による引っ掻き行動を指標として、これらのペプチドの髄腔内投与の効果を評価したところ、C-HK-1およびC-SPはHK-1およびSPと同様の引っ掻き行動を誘発し、N-HK-1およびN-SPは引っ掻き行動を誘発しなかった。しかし、N-HK-1およびN-SPを前投与すると、N-HK-1はHK-1およびSP誘発の引っ掻き行動を抑制し、N-SPはSP誘発の引っ掻き行動だけを抑制した。一方、N-HK-1およびN-SPの前投与はC-HK-1またはC-SPによる引っ掻き行動の誘発は抑制しなかった。さらに、ホルマリンの足底への注射によるフリンチング行動の誘発はN-HK-1またはN-SPの前投与で顕著に抑制された。引っ掻き行動は痛み同様痒み刺激でも誘発されることはよく知られている。そこで、N-HK-1またはN-SPの髄腔内投与後に痒み刺激として皮下にヒスタミンまたはセロトニンの注射したところ、N-HK-1の前投与でヒスタミンまたはセロトニン誘発の引っ掻き行動は有意に抑制されたが、N-SP前投与ではその効果は認められなかった。 以上の結果は、N-HK-1とN-SPの髄腔内前投与の効果に違いがあることを示し、この違いは痛みと痒みの成立過程の違いを反映している可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は、疼痛系とN-HK-1およびC-HK-1の関係に焦点を当てて研究計画を設定していたが、これらのペプチドが疼痛系と同様に掻痒系にも関係している可能性が示唆され、HK-1を通じて痒みの機構解明に対する糸口を得ることができたから。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度はHK-1の機能解明をその受容体との関係で解析を進める予定でいるが、本年度の結果に基づきHK-1の機能として痛みだけではなく痒みという視点を加えて解析を進めたい。また、本年度論文として報告したin vivoにおけるsiRNA法を積極的に活用し、HK-1の受容体を同定することで、HK-1とその受容体の痒みの成立過程における意義を明確にしたい。
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