平成24年度の研究目的は11個のアミノ酸からなる新規タキキニンペプチドであるヘモキニンー1(HK-1)を構成する個々のアミノ酸の役割を明らかにすることである。そのために、HK-1とタキキニンペプチドの代表である11個のアミノ酸からなるサブスタンスP(SP)との間でのキメラペプチドを合成し、これらのペプチドの薬理学的特性について疼痛系を用いて解析することとした。実験を開始する前に髄腔内にカテーテル留置のラットを作製し、このカテーテルを介して、種々のペプチドを髄腔内に投与し、熱痛覚過敏の誘発を指標として研究計画を実施した。最初に、アミノ酸の1番目から5番目まではHK-1由来、6番目から11番目まではSP由来のキメラペプチド(HK-1(1-5)/SP(6-11))と1番目から5番目まではSP由来、6番目から11番目まではHK-1由来のキメラペプチド(SP(1-5)/HK-1(6-11)を合成し、これらのペプチドを髄腔内に投与したところ、SP(1-5)/HK-1(6-11)は熱痛覚過敏を誘発し、HK-1(1-5)/SP(6-11)は熱痛覚過敏を誘発しなかった。このことは、HK-1が熱痛覚過敏を誘発しないのはHK-1の1番目から5番目を構成するアミノ酸に原因があることが明らかとなった。そこで、種々のキメラペプチドを合成し、熱痛覚過敏誘発の有無を調べたところ、HK-1を構成する2番目、4番目と5番目のアミノ酸が熱痛覚過敏の誘発に関与していることが明らかとなった。この結果はペプチドを構成する個々のアミノ酸の機能を解析する手段を提供していると同時に、ペプチドを構成する個々のアミノ酸の機能を明確にしたものである。
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