肉腫細胞をマウス左後肢坐骨神経周囲筋肉に移植し、増殖した肉腫細胞によって坐骨神経が絞扼されることによる、癌性疼痛モデルを最終的に確立した。本癌性疼痛モデルでは、増殖した肉腫細胞の量がある一定以上になると、一次知覚神経が完全に破壊されて痛覚麻痺が起こるため、長期間安定して癌性疼痛を測定するためには、移植する肉腫細胞の量を減らし増殖速度を遅くする必要がある。一方、移植する肉腫細胞の量が少なすぎると、生体内の防御機構により移植した肉腫細胞が駆逐される。そこで、移植する肉腫細胞の量を詳細に検討した結果、癌性疼痛を安定して測定することが可能な移植肉腫細胞量を発見した。確立した癌性疼痛モデルにおいては、肉腫細胞移植5日後から有意な疼痛閾値の低下(アロディニア)が発現し、移植10日後まで著しいアロディニアが持続した後、疼痛閾値は逆に上昇して移植16日後からは痛覚麻痺が発現する。本癌性疼痛モデルを用いて、癌性疼痛に対する麻薬性鎮痛薬の有効性を検討した結果、morphine、oxycodoneおよびmethadoneの鎮痛作用は、癌発症側足においてのみ著しく減弱した。Morphineにおいては肉腫細胞移植5日後に既に著しい鎮痛作用の減弱が認められたのに対し、oxycodoneおよびmethadoneにおいては移植7日後において初めて鎮痛作用の減弱が認められ、薬物間において鎮痛作用減弱の発現時期に違いが認められた。現在、本癌性疼痛モデルを用いて、「癌性疼痛形成時のμ受容体の機能変化ならびにそのスプライスバリアントの変動」を検討中である。
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