研究概要 |
中枢あるいは末梢神経の損傷により引き起こされる疼痛を神経障害性疼痛といい、難治性疼痛の一つとして知られている。神経障害性疼痛の病態として脊髄後角においてマイクログリアが活性化することが知られており、その活性化にはATPなどのヌクレオチドが関与することが多数報告されている。ATPなどのヌクレオチドをリガンドとする受容体にはイオンチャネル型のP2X受容体とGタンパク質共役型のP2Y受容体が存在しており、我々はP2Y12受容体は神経因性疼痛形成の初期段階に関与することをすでに発表している。本研究では、ラットの坐骨神経の枝である総腓骨神経と脛骨神経を結紮し、切断したSpared nerve injury (SNI)モデルを作成し、SNIモデルラットの脊髄マイクログリアでP2Y12受容体の他、P2Y6, P2Y13, P2Y14受容体発現が増加することを半定量的RT-PCR法とin situハイブリダイゼーション法にて明らかにした。これらの発現は損傷後3日をピークに2週間まで増加していたため、P2Y受容体のアンタゴニスト(P2Y6阻害剤のMRS2578、P2Y13阻害剤のMRS2211)あるいはP2Y14アンチセンスオリゴヌクレオチドを髄腔内に浸透圧ポンプを用いて持続的に投与を行い、疼痛関連動作を観察した。その結果、これらの薬剤で機械的アロディニアを抑制することができた。以上のことから神経障害性疼痛が形成される初期段階ではマイクログリアで増加するP2Y受容体が関与することが示唆される。
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