研究概要 |
中枢あるいは末梢神経の損傷により引き起こされる疼痛を神経障害性疼痛といい、難治性疼痛の一つとして知られている。神経障害性疼痛の病態として脊髄後角においてマイクログリアが活性化することが知られており、その活性化にはATPなどのヌクレオチドが関与することが多数報告されている。ATPなどのヌクレオチドをリガンドとする受容体にはイオンチャネル型のP2X受容体とGタンパク質共役型のP2Y受容体が存在しており、我々は昨年度までにP2Y6,P2Y12,P2Y13,P2Y14受容体が末梢神経損傷後のマイクログリアで増加し、これらのantagonistやantisense oligo LNAを髄腔内投与を行うことで疼痛行動を抑制することを明らかにした。23年度はどのようなシグナル伝達系を介してマイクログリアでこれらのP2Y受容体が増加するかを調べる為にMAP kinase inhibitorを髄腔内投与した。末梢神経損傷モデル作成時にp38 MAP kinaseの阻害剤であるSB203580とMEK inhibitorであるU0126を3日間浸透圧ポンプを用いて持続的に投与したところ、p38 MAP kinase阻害剤投与群においてP2Y6,P2Y13,P2Y14受容体のマイクログリアでの発現増加を抑制するが、P2Y12やIba1の発現増加には抑制効果がないことを明らかにした。また、U0126投与群では全ての受容体で抑制効果が見られなかった。これらのことから神経障害性疼痛が形成される初期段階でp38 MAP kinaseの阻害によりP2Y6,13,14受容体の発現増加が抑制される為、マイクログリアのATP感受性が減少することで疼痛行動が改善されることが示唆される。
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