視床神経培養細胞における Na+電流に対するオピオイド鎮痛薬の影響について whole-cell patch-clamp 法に従い検討した。 fentanylがNa+電流を抑制する機序を検討するために、チャネルの開口とNa+電流の抑制の関係について局所麻酔薬である lidocaine と比較した。その結果、lidocaine と同様にNa+電流はfentanylの処置によりチャネルの開口回数に依存して漸減した。一方、lidocaine とは異なり、fentanylをNa+チャネル非開口時に処置してもNa+電流は抑制された。Na+チャネルの不活性化電位に対するオピオイド鎮痛薬の影響について検討したところ、morphine、fentanyl および oxycodone の処置によりNa+チャネルの不活性化電位は薬物処置前と比較して過分極側へシフトした。オピオイド鎮痛薬の Na+チャネルに対する結合部位が細胞内に存在するか否かを同定する目的で、パッチ電極内に薬物を混入させることにより細胞内に薬物を直接投与した結果、fentanyl、oxycodone および lidocaine の細胞内処置はNa+電流に何ら影響をあたえなかったが、morphine の細胞内処置により、Na+ 電流は抑制された。以上より、オピオイド鎮痛薬は視床において、μオピオイド受容体を介さずに電位依存性 Na+ チャネルを抑制し、fentanyl は lidocaineと同様チャネルの刺激回数に依存した抑制作用の増強を示す一方で、lidocaineとは異なり静止状態のNa+チャネルにも作用する可能性が示唆され、fentanylやoxycodoneはlidocaineと同様に細胞外からNa+チャネルに作用するが、morphineは細胞外のみならず細胞内からもNa+チャネルに作用する可能性が示唆された。
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