本研究の目的は、評価が導入されていない公立ミュージアム向けに、自前で運用できる持続可能な「評価パッケージ」を提案することである。それに向け今年度は、すでに評価を導入している公立ミュージアムにおける評価導入・運用の実態をヒアリング調査した。 ヒアリング対象ミュージアムは、(1)横浜市ふるさと歴史財団、(2)東京都写真美術館、(3)川崎市市民ミュージアム、(4)山梨県立博物館、(5)豊田市美術館、(6)三重県立斎宮歴史博物館、(7)京都文化博物館、(8)財団法人大阪市博物館協会、(9)広島市文化財団(広島市郷土資料館)、(10)徳島県立博物館、(11)高松市美術館、(12)香川県立ミュージアム、である。 ヒアリング項目は、a)自己点検・第三者評価の概要、いままでの経緯、b)評価運用のための予算・体制・作業量、c)行政が実施する各種評価との関係、d)評価導入によるメリット、評価導入後の問題点や課題、e)評価を継続するためにクリアしなければならない事項などである。 今年度の調査から、(1)評価の意味や位置づけが、評価導入当時の「使命に基づく経営を支えるツール」という位置づけから、「職員の意識を変える、気づきの場」に変化してきていること。(2)評価活動を持続させるための課題として、(1)適当な第三者評価委員がいない、(2)評価活動を遂行する際、特定個人への依存が大きいこと、(3)評価活動がマンネリ化・形式化している、または評価に係る作業量が大きく、運用の仕組みが複雑化していること、が判明した。これらの知見は、今後提案する、自前で運用できる持続可能な「評価パッケージ」を検討する際、評価指標の選定以上に重要なファクターとなることが予想される。
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