本研究の目的は、超高精細動画像技術を用いた新しい高精細立体視動画像コンテンツの制作手法を開発し、豊かな臨場感をもつ博物館展示の手法を提案することである。本年度の目的は、表現技法と映像制作に関する従来の研究成果に基づく予備的な事例研究を開始し、高精細立体視動画像の試験制作に必要な作業工程を研究することであった。主に、鈴木が表現技法の研究を担当し、佐藤が映像制作の研究を担当した。共同で作業工程を研究した。 表現技法の研究 動画像作品のリアリティに関する事例研究に着手した。種々の表現事例の予備観察を踏まえ3D動画像と2D動画像の違いを考察した。両者とも動画像表現であるため鑑賞者へ時間の体験を伝える点は共通すると考えられた。しかし3D動画像の空間表現では、上映環境ごとに最適な被写体配置を事前に設定して撮影を行う必要があると考えられた。予備観察に基づき動画像の評価指標を作成することが、今後の課題である。 映像制作の研究 表現技法の研究を踏まえて博物館展示物に擬した種々の被写体を設定し、超高精細動画像と3D動画像の段階的な試験制作に着手した。撮影条件と被写体条件の組み合わせを変化させながら撮影を行い、撮影工程の記録を行った。超高精細動画像の制作では、3K規格と4K規格の既製カメラを用いてカメラ機種間で表現特性を比較する試験撮影を行った。3D動画像の制作では、1台のカメラ筐体に2つのレンズを内蔵した既製カメラの有効性を検討する試験撮影を行った。学外より借用した3Dモニタで予備観察を行った。今後の課題は、実験的な編集作業を進めながら、超高精細カメラの3D撮影から編集へ至る効率的な作業工程を検討することである。
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