研究課題/領域番号 |
22601010
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
佐藤 一彦 立教大学, 現代心理学部, 教授 (80440197)
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研究分担者 |
鈴木 清重 立教大学, 現代心理学部, 助教 (30434195)
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キーワード | 超高精細立体視映像 / 博物館展示 / 表現技法 / 臨場感 / 実験心理学 / 映像身体学 |
研究概要 |
本研究の目的は、超高精細動画像技術を用いた新しい高精細立体視動画像コンテンツの制作手法を開発し、豊かな臨場感をもつ博物館展示の手法を研究することである。本年度の目的は、1事例研究に基づく表現技法の研究と、2.試験制作に基づく映像制作に関する研究を継続しながら、3高精細立体視動画像の試験制作に必要な作業工程の検討を段階的に進めることであった。 本年度の大きな成果は、株式会社計測技術研究所との共同研究で実用的なコンテンツを考案し、4K3Dの試験動画像を制作したことである。試験制作の過程で、博物館展示に適した展示方法と「スクリーン上の空間設定」を検討した。従来一般的であった大画面提示の3D映像の多くは、被写体を遠景で撮影する手法を多用してきた。奥行きのある広い空間内に被写体を配置し、遠くから撮影することで大画面上での奥行き印象を強調する。しかし、小さな展示物そのものが与える微細な立体感を表現することは難しいと考えられた。そこで、計測技術研究所とレッドローバー社(韓国)が共同開発した2-LCDハーフミラー式モニタで上映することを前提とした新しい高精細動画像を考案した。2-LCDハーフミラー式モニタは、立方体の筐体内で4K液晶パネル2枚の画像を融像する。観察者は立体視用の眼鏡を装着しモニタの正面に立ち、立方体の内部を覗き込む。観察者に「覗き込む」動作を求める特性を利用し、小さな被写体を単独で詳細に観察できる動画像の構成を検討した。完成した試験動画像は、いずれも小さな被写体の近影であった。直径15cm程の萩焼の茶碗や、縮緬の衣装を着た身長10cm程の人形等を撮影した。予備観察より、あたかも立方体内に展示された「実物」を観るかのように感じられ、被写体の微細な肌理を表現できた。研究成果を踏まえ、国際放送機器展(interBEE)および立教大学新座キャンパスで機器と動画像の展示を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、今年度は昨年度からの研究成果を踏まえ試験制作の工程を整備し、次年度の試験制作で実用的なコンテンツの完成と展示を予定していた。しかし共同研究を進める過程で幾つかの大きな問題を克服し、今年度中に試験動画像の制作と展示を達成することができた。さらに研究を継続し、制作工程に改良を加えながら試験動画像の種類を増やす必要はあるが、当初の計画より早いペースで進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に従い、表現技法の研究と映像制作の研究を継続する。これまで研究してきた2Dと3Dの表現技法に関する知見を踏まえ、平成23年度に検討した高精細立体視動画像の展示方法について、さらにどのような技法を適用できるか検討する。試験動画像の制作では引き続き立体視動画像の撮影に必要な「スクリーン上の空間設定」を検討する。撮影条件を体系的に変化させながら、展示環境の空間で「撮影環境の空間」がどう知覚されるか検討する。また、平成23年度の試験動画像を使用し、被写体を実物で観察した場合や写真により観察した場合とどのような体験の差があるか、実験心理学的に検討したい。以上の知見を踏まえて制作工程に改良を加え、試験動画像の種類を増やす。低コストで効率的な作業工程をまとめ、展示会等での発表を行いたい。
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