本研究は、地域の生活世界に根ざした視点である"土着科学"を軸とした学校ミュージアムを機能させることにより、身近な地学の事象が生活とのかかわりが深いことを再認識させるとともに、学校教育での地域素材の教材活用を高めることを目的とする。具体な目標は次の通り。 (1) 生活に根ざしている地域地学素材について、地学的、民俗学的基礎情報を調査収集する。 (2) "地域地学素材"の内容を取り入れた総合的学習と教科学習におけるプログラム作成。 (3) 博物館が持つ視点"土着科学"のかかわりを、学校教育の教科学習へ反映するパターン例示することを目的に学校ミュージアムと教員研修プログラムの実践。 本年度の研究では、主に上記(1)の地域素材に関する基礎調査を行った。地域地学素材の1つは、昭和40年代頃まで採石されていた「戸川砥」である。かつて、地域の生活に根ざしていた戸川砥を取り上げ、戸川砥の採石場跡の追跡調査、元砥石採石業の方々への聞き取り調査、砥石原石岩脈の分布調査、河川における砥石礫の分布調査、砥石採石道具類の収集、流通砥石の追跡調査等を行った。(2)(3)に関連し、地域素材「戸川砥」を教材とした学習プログラムを検討するとともに、野外学習を含む教員対象講座を試行した。学校開催とするミニ展示「戸川砥展」については戸川砥に関する上記の現地調査、情報収集により展示コンテンツが見えてきており、次年度の展示実践にむけ土着科学の視点をふまえた展示として情報整理をはじめている。教科学習に関連しにくい地域素材を普及させるための方策を検討している。
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