研究概要 |
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy, DMD)は、ジストロフィン遺伝子に変異が生じたことによりジストロフィン蛋白質が全く欠損した疾患です。現在までのところ、根本的な治療法はありません。本研究では、筋ジストロフィー患者に見出されたDystrophin遺伝子変異とそれに伴うスプライシング異常の解析を行います。また、この患者では、変異がみられるエクソンをスキップさせることで、ある程度の活性を持つタンパク質が産生されていますが、申請者らはこのエクソンスキップを促進させることができる低分子化合物を見出しており、その作用機序の解明を行うことで、筋ジストロフィー患者の治療薬開発につなげたいと考えました。 平成24年度は、以下の実験を行いました。 我々はClk阻害剤であるTG003が他の患者のスプライシングに与える影響を解析したところ、少なくとも2例についてTG003は終止コドンを持ったエクソンのスキップを促進することが明らかになりました。また、TG003によるエクソンのスキップ機構、および他の遺伝子のスプライシングに与える影響について、さらにTG003による副作用を検討するため、筋芽細胞であるマウスC2C12細胞をTG003処理し、細胞内mRNAのスプライシングパターンの網羅的解析を行いました。その結果、200個程度のイントロンのスプライシングが影響を受けることが明らかになりました。TG003によるスプライシングの影響は、エクソンのスキップ、包含の両方向が存在していましたが、それらのイントロンはピリミジントラクトと呼ばれる、3’スプライス部位認識に重要な配列の長さが短いことがわかり、TG003はピロミジントラクトを認識し、3'スプライス部位認識を補助する因子に影響を与えることが強く示唆されました。
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