研究課題/領域番号 |
22603003
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
安藤 吉勇 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (40532742)
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キーワード | 有機合成化学 / 生理活性物質 / プルラマイシン類 / C-グリコシド |
研究概要 |
本研究は、抗腫瘍性抗生物質であるプルラマイシン類をリード化合物として、蛍光分子プローブの創製を目指すものである。プルラマイシン類は2つのアミノ糖によってDNAの塩基配列を認識し、高い生理活性を示す。一方、蛍光分子は生体分子を標識化することで、生命現象を観察するために利用される。蛍光分子にプルラマイシン類が持つ糖部位の構造を導入することができれば、特定のDNA配列を認識する蛍光プローブの創製が期待できる。しかし、その糖部位はビス-C-グリコシドという特徴的な構造を持ち、合成は容易でない。まずは、プルラマイシン類の実践的合成法の開発を目指し研究を開始した。 当該年度では、アグリコン部位のピラノアントラキノン部位の合成を目指した。すでに、申請者らのグループはビス-C-グリコシド構造の合成に成功している。しかし、2つのアミノ糖を有したままでは、使用可能な合成反応が限られるため全合成には至っていない。さらに、合成の過程において予期しない現象が頻発することも問題である。このため、いかにして糖部位の構造を保持しつつ骨格変換するかが重要であり、どんな場合にも有効に働く信頼性の高い反応の開発が必要となる。申請者はナフトキノンモノアセタールのDiels-Alder反応を鍵反応として合成に取り組んだ。 前年度の検討において、反応性の低いナフトキノンモノアセタールをジエノフィルとして用いたDiels-Alder反応を良好な収率で進行させる条件を見出しており、そこから得られる付加体からアグリコンを目指した。検討の結果、付加体にヨウ素を導入できる条件を見出すことができ、そこからアリールヨージドへの変換も可能となった。さらに、導入したヨウ素を足がかりとしてアニオンを発生させることで側鎖であるイノンを導入できた。その後、環化反応によりγピロン環を構築し、アグリコン骨格を合成することができた。現在、収率の向上にむけて検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成23年度までにプルラマイシン類の合成経路を確立する予定であったが、未だに全合成には至っていない。本化合物はアミノ糖を有したままで炭素骨格の構築や様々な官能基変換を行わなければならないため、適用可能な合成法が限られる。そのため新たな合成手法を開発する必要があり、その検討に時間を要するためである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目標であった天然物の蛍光化を達成するためには、その全合成が不可欠であるため、とにかく全合成を目標とし鋭意検討していく予定である。現在、アグリコン部位の合成法は確立してきているため、今後はアミノ糖部位を導入し、これまで見出した方法がどこまで通用するのかを確認していく。
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