10種のツバキ科植物に存在するカフェイン合成酵素のオーソロガス遺伝子の単離と解析を昨年度に引き続き行った。得られた遺伝子がコードするモチーフB’メチルトランスフェラーゼの基質の同定を、組換え型酵素を用いて試みた。その結果、テオブロミンシンターゼとサリチル酸メチルトランスフェラーゼを同定することができた。 プリンアルカロイドを蓄積しないツバキ科植物にもテオブロミンシンターゼが発現していた。これらのオーソロガス遺伝子のコードするメチルトランスフェラーゼを、Clarkia breweriのサリチル酸メチルトランスフェラーゼを鋳型としてホモロジーモデリングによる立体構造の推定を行った。得られたメチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列の相同性は低い場合では40%程度であるが、立体構造には共通した特徴がみられた。しかし、基質が結合すると思われる空間の形状はさまざまであり、酵素遺伝子の進化の過程でこの空間が変化することにより新たなメチル化の機能を獲得して、多様な二次代謝産物を生む原動力となったことが示唆された。 一方で、カフェインを蓄積するチャ(Camellia sinensis)の緑色カルスの系を確立することに成功した。このカルスにジャスモン酸を投与することでカフェイン合成を誘導することが可能となった。ジャスモン酸によって発現誘導される遺伝子のうち、カフェイン合成酵素遺伝子の転写制御に関与すると思われる遺伝子断片の情報を得ることができた。
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