ATPを必要とする生物発光は、Watasenia scintillans発光やホタル生物発光を含め多くあり、ホタル生物発光を除いては、ATPの作用機構は不明である。Watasenia scintillans発光におけるATPの作用機構の解明は、ATPが関与する多くの生物発光におけるATPの役割の理解につながるものと期待できる。本研究の対象であるWatasenia scintillans生物発光は、発光基質、発光関連酵素、ATPが必要であり、発光関連酵素は熱、化学薬品等に非常に不安定であることが判明しており、また、水溶液での既存のタンパク質可溶化剤および独自に合成した非イオン性可溶化剤を用いて可溶化処理を施すと急激に発光活性は消失し、活性を保持した可溶化に成功していない。 本研究では、昨年度に引き続き発光関連酵素の水溶化に関して検討した。発光関連酵素はイオン強度の上昇により発光活性の低下が生じることが判明しており、非イオン性のタンパク質可溶化化合物を化学合成し、発光関連酵素の可溶化を検討した。昨年、環状糖鎖シクロデキストリンに資質鎖を化学結合させた化合物を検討したが、今回はシクロデキストリンに結合させる脂質鎖の長さの延長および脂質鎖の数の増加を行い、疏水性の増強を図った。しかし、いづれの合成可溶化剤においても、発光活性の消失が生じ、また可溶化には至らなかった。これまでの研究の結果から発光関連化合物の可溶化は困難であるとの判断にいたり、可溶化の検討を中断した。
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