本研究テーマのうち、本年度はC型肝炎ウイルスのNS3ヘリケースに対する阻害作用物質の探索を中心に行った。当研究室で保存するサンゴ礁生物のエキスライブラリ539個を連携研究者・野田らによるアッセイ系で評価し、そのうちヒットしたエキスのいくつかを選んで活性成分の単離・同定を行った。 海綿C-11のエキスがFRET/PETによるスクリーニングで阻害活性を示したことから、分画したところ、psammaplin Aとその関連化合物を活性成分として見い出した。psammaplin AはすでにHDAC阻害剤として知られている化合物であった。 海綿00D39のエキスも活性を示したことから分離したところ、halenaquinol sulfateを阻害作用成分として同定した。 次にウミシダの一種Alloeocomatella polycladiaのエキスが活性を示したことからアッセイと並行して分画したところ、cholesterolsul fateと新規多環芳香族sulfate類を活性成分として見い出した。 しかしながら、上記の化合物の多くは、山梨大学の山下によるrepliconアッセイにおいて有意な活性を示さなかった。その原因としては、膜透過性の問題や得られた活性成分にsulfateを含むものが多いことから、この官能基と酵素の間に何らかの関係があるのでは、と示唆された。現在はこの経過を踏まえ、エキスのrepliconアッセイを先に行い細胞レベルで効果を示す物質を探索している。 テロメラーゼ賦活作用および翻訳阻害活性に対してもエキスのスクリーニングを行い、それぞれ活性を示したエキスから活性成分を同定している。
|