研究課題
平成23年度は主にC型肝炎ウイルス(HCV)のNS3ヘリケースを標的にする物質についての研究をさらに進めた。昨年度、北谷町で採集したウミシダの一種Alloeocomatella polycladiaのエキスがヒットしたことから、いくつかの活性物質の単離につながった。このエキスレベルでの活性等について雑誌Marine Drugsに報告した。さらに、このエキスから見出した活性物質のうち、cholesterol sulfateについては、その活性メカニズムを評価し、論文を投稿している。他にもNS3ヘリケースに対する阻害活性で同定した化合物のうち、PLA2阻害活性で知られているmanoalideについて、活性メカニズムがATPase阻害とRNAヘリケース阻害であることを共同研究者とともに雑誌J.Nat.Prod.に報告した。渡嘉敷島で採集した海綿功Dysidea granulosaのエキスがPETアッセイでヒットしたことからその主成分であるpolybrominated diphenylether (PBDE)を調べたところ、活性が確認された。現在、構造活性相関について検討している。西表島で採集した海綿Halisclona sp.のエキスがHCVのレプリコンアッセイでヒットしたことから、この分画についてアッセイと並行して化合物の同定を進めている。一方、恩納村で採集したコケムシの一種Calyptotheca sp.のエキスは、共同研究者のPelletierらが行うタンパク合成阻害活性でヒットした。アッセイと並行して分離したところ、A環にエノンの入った新規ステロイド化合物を2つ見出し、MTPAエステルを作成してその側鎖の立体配置を決定した。現在、論文投稿に向けて準備をしている。
2: おおむね順調に進展している
HCV NS3ヘリケースに関する研究では、スクリーニングの結果と特定した阻害剤について5件の学会発表と2報の論文を報告した。現在さらに投稿中の論文や進行している研究がいくつもあることから、今後も順調に成果報告できる予定である。一方、タンパク合成阻害活性では、ヒットしたサンプルから新規阻害物質を見出し、その最終的な構造と生理活性について検討している。また、さらに新規阻害剤を求めて探索も継続している。
今後も共同研究者とともに、新たなサンゴ礁生物ライブラリーの作成、探索、化学構造の決定、および生理活性の評価を通して論文と学会報告を着実に行っていく。また、見出した生理活性物質については、より詳細な評価(例:レプリコンアッセイでのウイルス部分の変更等)を通して今後の発展を検討する。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)
J. Nat. Prod
巻: 75 ページ: 650-654
DOI:10.1021/np200883s
Marine Drugs
巻: 10 ページ: 744-761
10.3990/md10040744