研究課題/領域番号 |
22603014
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
平井 剛 独立行政法人理化学研究所, 袖岡有機合成化学研究室, 専任研究員 (50359551)
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キーワード | ホオズキ / ステロイド / 有機合成 / NF-κB / Physalin / ワンポット反応 / ドミノ反応 |
研究概要 |
本研究では、ホオズキ成分で様々な興味深い活性を示すphysalin類に着目し、これらの活性発現に必要な部分構造を突き止めること、またそれをプローブ化し標的タンパク質を同定することで生物活性発現機構解明に寄与すること、さらに有機合成化学的に興味深いphysalinB,Fの全合成を達成すること、の3点を目的として設定した。 昨年度は、これまでに構築したDEFGH環部前駆体の13位に対するC-C結合生成反応を検討し、中程度の収率ながら目的物を得ることができた。今年度は、この後の変換と14位に対するRh触媒を用いるC-H挿入反応を検討した。前駆体となるジアゾケトンの調製が予想以上に困難であり、時間を要したが、分子内に新たにラクトン環を構築することで問題を解決した。調製したジアゾケトンをRh触媒で処理したところ、反応は進行したが、目的の14位C-H挿入が進行した生成物ではなく、新たに構築したラクトン環のカルボニル基と反応し、さらに近傍の水酸基が反応した複雑な構造を持つ化合物が生じた。このことは、当初に考えた合成ルートではphysalin構造を得ることが難しいことがわかった。現在、別法の開発を検討中である。 一方当初の計画を拡張し、植物から単離した天然物を利用した標的タンパク質同定も展開した。今年度は、理化学研究所の畑で栽培した鑑賞用ホオズキと食用ホオズキの葉部より、高度に酸化されたステロイド成分を各種単離に成功した。これらのNF-kB阻害活性について検討し、physalin類等の構造活性相関研究をまとめることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画した14位C-H挿入反応が想定外の副反応によって、進行しなかった。前駆体の合成について細かく検討したが、いずれも分子内に新たなラクトン環を構築しなくてはならず、これが後の副反応の原因となったのは予想外であった。早急な解決法開発を目指し、現在この部分について全力を注いでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現在取り組んでいる14位C-H挿入反応の問題が解決すれば、実現困難と考えられてきたphysalin類及びその中間体を合成できる道がひらける。解決策がうまくいかない場合は、別法で14位のC-H酸化を検討し、この壁をクリアしたい。この問題が解決できれば、本研究の最大のポイントである「全合成研究を直接構造活性相関研究に繋げる」というコンセプトを実現でき、有機合成研究と創薬化学研究に貢献できると考えている。
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