本研究では、ホオズキ成分で様々な興味深い活性を示すphysalin類に着目した生物有機化学、および有機合成化学研究を展開している。 昨年度は、各種誘導体合成および、全合成に繋がる14位C-H挿入を種々検討したが、成功しなかった。今年度は、別ルートによる14位C-H挿入反応を検討した。隣接水酸基を足がかりとし、原料となるジアゾアセテートを合成し、種々検討した。本ルートでは、C-H挿入反応の位置選択性が課題となるが、半年間の検討の末、高収率かつ高位置選択的な14位C-H挿入反応を達成した。成功の鍵は、近傍の官能基の調整と触媒の選択であった。本結果は、複雑な構造でのC-H挿入反応の好例となり、有機合成化学の発展に大きく寄与するものであると考えられる。 一方当初の計画を拡張し、植物から単離した天然物を利用したphysalin類の作用機序解明研究も展開した。昨年度は、単離した種々の酸化ステロイドのNF-kB活性化阻害について、構造活性相関研究をまとめることができた。今年度は、さらに構造-作用機序相関研究につなげ、酸化ステロイドがおよぼすNF-kB活性化の際の細胞内情報伝達経路への影響を詳細に検討した。その結果、B環部5,6位にエポキシドを有するphysalin類およびwithanolide類は、顕著にNF-kB活性化の鍵であるIkB-alphaのリン酸化、分解を抑制した。一方で、エポキシドではなく2重結合を有する酸化ステロイドはIkB-alphaのリン酸化、分解をほとんど抑制しないことを突き止めた。
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