研究課題
本研究課題は、ヒトES/iPS細胞の未分化性維持に関与するFGF-2によって活性化されるリン酸化シグナル伝達経路の探索を目的とする。現在一般的に使用されているヒトES/iPS細胞用培地は、数多くの不特定因子を含み、それら不特定因子によって多くのシグナル伝達経路が活性化する。そのため、添加する小分子化合物や増殖因子の作用機構の解明を困難にしている。申請者らは、ヒトES細胞の未分化状態の維持に必須であると考えられているFGF-2のみを含む無血清培地を用いて、アルカリフォスファターゼ活性を指標とした多検体処理の可能な手法を開発した。この新規評価法を用いて、FGF-2シグナルの下流経路に作用し、未分化なヒトES/iPS細胞の自己増殖を促進させる小分子化合物を探索した。数多くの小分子化合物をスクリーニングした結果、申請者らは未分化なヒトES/iPS細胞の増殖を促進させるPKC阻害剤(GF109203X)を発見した。PKCは、ヒト多能性幹細胞の分化・未分化性を制御する重要なFGF-2の下流シグナル伝達経路に関与することが考えられた。PKCノックダウン解析の結果、私たちはPKCがFGF-2の下流経路であるAKT、ERK1/2、GSK3のリン酸化に関与することを明らかにした。またActivin Aの添加は、FGF-2と相乗的にERK1/2、GSK3のリン酸化を増加させた。このERK1/2とGSK3のリン酸化は、GF109203XおよびERK経路阻害剤U0126の添加によって阻害された。GF109203XおよびU0126の添加は、ヒト多能性幹細胞の安定な増殖を促進し、単一細胞剥離による継代を可能にした。本研究課題の遂行により申請者は、FGF-2の添加により活性化するPKCによって、ヒトES/iPS細胞の分化・未分化な状態が制御されることを明らかにした。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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PLOS ONE
巻: 8(1) ページ: e54122
DOI:10.1371/journal.pone.0054122.
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