間接遷移型半導体であるシリコンを用いた発光デバイスが実現し、シリコンを用いた駆動回路とモノリシック化することにより、光電子デバイスの画期的な進展がもたらされる可能性がある。本研究は、このような実用的な光電子機能デバイスの実現をめざし、発光現象を中心としたシリコンナノ結晶物性を調べることを目的としている。具体的には、シリコン基板上の熱酸化膜にシリコンイオンを注入したものを試料として用い、高温加熱前の赤外線急速加熱、エキシマUV光効果等を評価した。特に本年度は、単一加速エネルギー、注入量(180keV、7.5×10^<16>Si ions/cm^2)の試料に限定し、発光強度、発光ピークなどの光学特性評価を中心とした。その結果、急速ランプ加熱(1050℃、5min)を高温熱処理前に施すことで発光強度が2倍ほど向上することがわかった。さらに、高温熱処理前にUV光照射(172nm、50mW程度)を行った後、急速ランプ加熱を施した場合は、発光強度が3倍程度に向上することもわかった。また、同時に発光のピークエネルギーのレッドシフトも観測されることが分かった。これらの効果は、各処理プロセスにより、欠陥生成・消滅、拡散、核形成、結晶成長などの微細構造が変化し、発光特性に影響を及ぼすものと考えられる。また、ここで観測された発光ピークエネルギーのシフトはこの発光が単に量子サイズ効果で変化したバンド間遷移によるものではないことを強く示唆しており、私たちの提案するモデルの正当性も強く支持するものである。
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