シリコンは現代の繁栄の礎である。このようなシリコンは太陽電池や光検出器などの光電変換素子としては実用化されているが、発光素子としては熱望されながらも実用化されてはいない。本研究は、この様なシリコンの新機能性の発現・高効率化とそのデバイス応用を融合プロセスにより達成しようとするものである。私たちは、半導体プロセスで多用されているイオン注入法を用いてバルクシリコンとは特性の異なる可視発光シリコンナノ結晶を生成する手法を世界にさきがけて開発した。本研究は、この手法と急速加熱、エキシマUV光、電子線照射等を組み合わせた手法でプロセスの低温化、発光強度増強、発光波長制御の可能性などを探ることを目的としたものである。 この目的を達成するため、シリコン基板上の熱酸化膜にシリコンイオンをイオン注入したものを試料として用い、赤外線急速加熱、エキシマUV光照射、電子線照射等などを併用し、その効果・有効性を構造評価、物性評価の両面から進め、シリコンナノ結晶の基礎物性を解明し、ナノシリコンからの可視発光の機構を明らかにするとともに、その実用デバイス応用の可能性を探った。また、シリコンイオン注入と他のプロセスを機能的に組み合わせることで、欠陥生成・消滅、析出、拡散、核生成・成長、結晶化プロセスを自在に制御することを試みた。 その結果、イオン注入した試料へのUV光照射、電子線照射、赤外ランプによる急速加熱により、界面状態、欠陥等を制御することが可能であり、電気炉による高温熱処理前にこれらの処理を行うことで発光効率が1 桁ほど向上することがわかった。処理条件により、欠陥生成・消滅、拡散、核形成、結晶成長プロセスなどが複雑に変化し、その結果、微細構造も変化し、発光強度が変化するものと考えられる。さらに、これらの方法により、プロセスの低温化、発光波長の制御も可能となった。
|