研究課題/領域番号 |
22604005
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
酒井 健二 独立行政法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 研究副主幹 (40272661)
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研究分担者 |
奥 隆之 独立行政法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 研究主幹 (10301748)
篠原 武尚 独立行政法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 研究員 (90425629)
大井 元貴 独立行政法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 研究員 (90446401)
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キーワード | オンビームSEOP / スピン相関 / 中性子偏極能力 / 希ガス偏極 / 中性子共鳴ピーク / 核磁気共鳴法 / 中性子光学 / J-PARC |
研究概要 |
近年、光ポンピング法(SEOP)による希ガス偏極技術の発達により、高偏極希ガスが生成可能になり、基礎物理から医療まで幅広く応用されるようになった。本研究では、中性子・原子核共鳴反応の持つスピン選択性に着目し、偏極Xeの中性子偏極能力を検証し、中性子を用いた偏極挙動の検知と新たな応用を模索する。平成23年度は、震災の影響で、J-PARCのビーム運転が長期間停止するとともに、開発整備した各種装置も一時的に使用不可能な状態となった。そこで、ビームが復旧した時点で中性子偏極能力検証実験が速やかに行えるようにするために、平成22年度に実施した実験データの整理・評価と、各種装置の復旧・改良・整備を重点的に実施した。 (1)中性子スピンsと核スピンIの相関項s-Iに起因する各測定量(断面積スピン依存性」Δσ_I、スピン回転角ω_I)に対する高偏極Xeガスの数値的評価や、SEOP希ガス偏極装置を中性子ビームラインに置いて実施した測定システム特性試験のデータ解析・整理を行い、結果を論文にまとめた。 (2)セル製作-SEOP偏極-核磁気共鳴(NMR)-中性子検出の各システムの復旧作業を行い、使用可能な状態まで整備した。実際にSEOPで偏極した希ガス(^3He)のNMR信号を実測できるところまで確認した。 (3)偏極中性子による偏極Xeの断面積スピン非対称度A_I測定を視野に入れ、複数台の希ガズセルの核スピン偏極制御・検出を並行して行うことができるNMR制御システムを新たに開発整備した。 (4)データ収集システム(DAQ)の性能で制限されていた中性子透過率の測定精度を向上するために、イベントデータ対応型のDAQを導入して開発整備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中性子偏極能力実験のための各種装置以上に、実験室やビーム照射施設などの周辺設備が震災の影響を大きく受けてしまい、その影響で本装置を使用可能な状態に戻すまでに思った以上に時間を費やしてしまった。その結果、希ガス偏極の生成・最適化の方はやや遅れている。一方、影響が小さいDAQ-NMR制御系の整備・高度化などは順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、希ガスの中性子偏極能力検証と応用として、^<129>Xeの共鳴ピークEs=9.6eVで中性子透過率変化ΔT_nを測定する実験を検討し、濃縮^<129>Xeガス厚~10atm-cm、偏極率P_<Xe>=10~20%というセル条件で、ΔT_n=0.3-1.2%という測定目標値を算出した。ただし予想されるΔT_nが小さいために、応用研究にまで展開するには、熱外偏極中性子によるスピン非対称度A_Iの測定、もしくは低圧高偏極フロー型^<129>Xe固体標的の開発などが必要となる。前者については、本研究に関連して偏極^3Heスピンフリッパーの開発を進めている。更には中性子光学的描像の実証や水溶液挙動測定への応用まで視野にいれると、冷・熱中性子領域でのA_I測定も重要になってくる。
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