本研究は、偏極パルス中性子のスピン制御法と偏極中性子イメージング法を組み合わせることにより、定量的に空間磁場を可視化する技術を開発することを目的としている。H22年度は、偏極パルス中性子のスピン量子化軸制御方法の確立に向けた実証試験を実施し、量子化軸制御機器の設計および製作を行った。 偏極中性子の量子化軸制御方法として、本研究では磁場環境下での中性子スピンの回転を利用する方法を検討した。試験研究では、2台の平板状のスピン回転コイルを直行して配置し、それぞれのコイルに独立に電流を印加することによって、Z方向、X方向(ここで、ビーム進行方向をZ軸とする)ヘスピン量子化軸を変更できることを確認した。パルス中性子の場合、そのエネルギーが中性子飛行時間に依存するため、コイルに印加する電流値を中性子の飛行時間に同期させて変化させることによって、広いエネルギー範囲の中性子について一定のスピン回転を与えることが可能となる。そこで、ビーム試験においてスピン回転コイルへの印加電流を時間変化させ、偏極中性子のスピン量子化軸を一定に制御可能であることを冷中性子領域で確認した。さらに、このスピン回転コイルを使用してX、Y、Zの3次元でスピン量子化軸を制御し、検極子を用いてスピン解析を行うことにより、ビームが通過する空間中の磁場をベクトル的に検出した。この結果から、位置敏感型中性子検出器と組み合わせたイメージング実験とスピン制御技術を組み合わせることで、位置毎の磁場ベクトルの情報を得ることが可能となることが示された。 この試験結果に基づき、5cm×5cmのビームサイズの中性子について使用可能なスピン回転コイルを設計し、製作を行った。
|