高圧セルのデザインに関しては、ビームシミュレーションを用いてアンビル形状、ビームコリメーターからの寄与などの評価をおこない、設計方針の検討をおこなった。また、高圧セルの材料については、高温高圧環境であることからタングステン合金が適していると考えられるが、4種類の候補物質についてJ-PARC物質生命科学実験施設ミュオンビームラインにおいてミュオン照射実験をおこなった。その結果、バックグランドからのμSR信号をできる限り抑えるという点において、三菱マテリアル社製のAN1800がもっとも適していることを見出した。 一方、高圧発生のための油圧ポンプおよび油圧制御システムの整備に関して、請負業者と検討を重ねて製作に取り掛かった。より安定度の高い高圧を発生させる目的で、油圧ポンプには日本精密科学社製のプランジャーポンプを採用することとした。しかし、製作途中、納入前の業者工場において東日本大震災による被災・損傷があり、年度内での組み立て、および高圧発生試験の実施が困難となった。そのため、相当分の予算を平成23年度に繰り越して制御システムの製作をおこなうこととした。制御システムの製作完了後、上述の油圧ポンプと組み合わせて目標とする圧力の発生が可能であることを確認した。
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