研究課題/領域番号 |
22605001
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐々木 茂 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (90254143)
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キーワード | トリアリールホスフィン / 電子受容体 / 酸化還元 / 紫外可視吸収スペクトル / 蛍光スペクトル / 溶媒効果 / 機能性色素 |
研究概要 |
立体混雑したトリアリールポスフィンが電子受容体と有効に共役したpush-pull型機能性色素の構築を目的として、ケトン、アルデヒド、キノメタン等の電子受容体と共役した立体混雑したトリアリールポスフィンをプロモアリール基を有するトリアリールポスフィンを鍵合成中間体として合成し、その構造と性質を明らかにした。X線結晶構造解析の結果からは電子受容体との共役によるリン原子周辺の構造変化は認められなかった。これらの立体混雑したトリアリールポスフィンのサイクリックボルタモグラムではホスフィン部位の酸化に対応する可逆な酸化還元波と電子受容体部位の還元に対応する非可逆な酸化還元波が観測された。これらの化合物は榿色から赤色を呈し、対応する可視部のππ*吸収及び補色領域での(すなわちStokesシフトの大きな)弱い発光が観測され、酸化電位と還元電位の差に対応した極大吸収波長及び極大蛍光波長の長波長シフトが見られた。また、吸収、発光スペクトルともに極性溶媒中での長波長シフトが見られ、その効果は発光スペクトルでより顕著であり、励起状態での大きな分極が示唆された。一方アルデヒドのMcMurryカップリングにより得られた2つの立体混雑したトリアリールポスフィン部位を有するスチルベン誘導体では共役長は長くなるが、吸収、発光の長波長シフト、溶媒効果ともに電子受容体と連結した系に比べて小さくなった。これらの検討から立体混雑したトリアリールポスフィンを電子受容体と共役させることにより比較的簡便に長波長領域に吸収帯を有しStokesシフトの大きな蛍光を発光する色素が合成できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
東日本大震災の被害により、研究活動の休止期間が生じ、更に、一部研究設備が破損し復旧が遅れたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度までの成果及び予備的な検討を踏まえ立体混雑した高周期典型元素化合物及びそれらを鍵とする機能性分子の合成及び性質の検討を継続する。平成24年度は最終年度であることを踏まえ、全体の総括を意識して研究を推進する。
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