研究概要 |
シアノ基が1、2、及び3つ導入された立体混雑したトリアリールホスフィンを対応する(ブロモアリール)ホスフィンとシアン化銅(I)との反応により合成し、これらがシアノ基の導入に従い酸化電位が上昇し、吸収、蛍光波長ともに短波長シフトすることを明らかにした。DFT計算からは主にシアノ基の導入によるリン原子上のHOMOの低下が原因であることが推測された。一方で、X線結晶構造解析から得られた分子構造やリン原子周辺の構造にはシアノ基の影響はほとんど見られなかった。また、これらの化合物ではシアノ基の官能基変換やシアノ基を足掛かりとした共役系の伸長、新たな酸化還元系の構築が可能であり、例えば(4-ジアリールアミノ)フェニルリチウムとの反応後加水分解することにより、カルボニルを介して立体混雑したトリアリールホスフィンとトリアリールアミンを連結することができた。すなわちこれらのシアノ基が導入された立体混雑したトリアリールホスフィンが立体混雑したトリアリールホスフィン構造を有する機能性分子の有用な鍵合成中間体であることを明らかにした。 3つの2,4,6-トリイソプロピルフェニル基を有するトリアリールホスフィン、アルシン、スチビンの酸素官能基化を中心とした反応性を検討し、ホスフィン、アルシンについてはmCPBA酸化により対応するホスフィン及びアルシンオキシドが得られること、X線結晶構造解析から得られたオキシドにおけるリン、ヒ素周辺の結合角は112度程度と大きいものの対応するフェニル体との差はホスフィン等の場合ほど大きくなく、NMRやIRから推測される電子状態の差も立体混雑の影響を3価の場合ほど受けないことが分かった。一方対応するラジカルカチオンと酸素との反応ではオルト位の置換基が関与した生成物が得られることから、これらの系では酸化条件により生成物の違いを示すことが明らかになった。
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