研究課題/領域番号 |
22610011
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
酒井 久美子 大分大学, 全学研究推進機構, 助教 (60225753)
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研究分担者 |
酒井 謙二 九州大学, 農学部, 教授 (50205704)
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キーワード | 情動障害 / 環境化学物質 / n-3/n-6脂肪酸 / MAOA |
研究概要 |
研究目的;近年の子ども達の学習障害や情緒障害の原因は何か?私たちは偶然に安息香酸亜鉛が脳においてセロトニン代謝系を乱す可能性があることを発見し、さらに脳神経系を構築するn-3系高度不飽和脂肪酸の不足が、神経伝達系に異常をもたらすことも見いだしている。化学物質過剰な生活環境と偏った食生活が、脳神経系にもたらす相乗的なリスクを生化学的な手段を用いて検証する。 I、ラット脳ミトコンドリアMAOA(モノアミンオキシダーゼA)画分を含むミクロドメインの解析 ラット肝臓および脳よりミトコンドリア画分を調製した。本画分からさらに膜画分を分離するため、いくつかの画分を得た。MAOA抗体を用いたウェスタンブロット法により、MAOAが存在する画分を調製することに成功した。二の膜画分から総脂質を抽出し、薄層クロマトグラフィー(TLC)で脂質の定性分析を行った。 II.安息香酸亜鉛がマウス子どもの脳神経系に与える影響の検証 本目的のために、点突然変異と欠失突然変異の検出が可能なトランスジェニックマウスgpt deltaの飼育を既に始めている(本マウスは国立医薬品食品衛生研究所の能美健彦博士により開発され、繁殖許可を得ている)。雄雌でペアリングを行い、安息香酸亜鉛を水に混ぜて給水させ、母マウスの妊娠を現在、待っているところである。妊娠すれば、胎内にいる段階から安息香酸亜鉛に暴露されているはずであり、出産後の仔マウスの飼育期間中の様子を観察し、生化学的、組織学的な手段を用いて検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
MAOAの活性を測定する評価系の確立が遅れている。が、本課題中、もっとも時間がかかるマウスの飼育実験を先に立ち上げたためで、おおむね、遅れは取り戻される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
I.MAOA活性阻害評価系おいて実際に影響を与える可能性のある環境物質を試験する。 1.脳および肝臓のミトコンドリアMAOA画分をそれぞれし調製する。 2.安息香酸亜鉛によるMAOA活性の阻害に影響を与えるものとして下記の物質を準備する。 脂肪酸(n-6系;リノール酸、アラキドン酸) 脂肪酸(n-3系;α-リノレン酸、EPA、DHA) 微量金属(亜鉛等) 3.MAOA活性阻害評価系に2.の影響を与える物質を加え、活性阻害の様子を検証し、統括する。 II.マウスgpt deltaを用いた安全性試験 本マウスは点突然変異と欠失突然変異の検出が可能なトランスジェニックマウスである。このマウスの母親に安息香酸亜鉛を与え、胎児期より安息香酸亜鉛に暴露する。まず、生存率を検証し、影響が出た時点で、組織よりDNAを抽出し、変異の有無や変異部位の検出を行う。同時に組織より抽出したmRNAよりマイクロアレイ解析を行い、DNA発現パターンを解析する。(gpt deltaマウスは国立医薬品食品衛生研究所の能美健彦博士により開発されたもので、繁殖の許可を得ている。)
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