研究概要 |
今年度は,学習者の社会的スキルに着目して,「他者の存在」を意識する学習活動場面でのストレス状況を生理的指標から検討する実験を行った.健常な大学生83名(男22名,女61名)を対象に,2種類の学習環境(open条件:課題タスクの成績開示有,close条件:開示無)を設定した,社会的スキルの測定にはKiSS-18(菊池,1988),ストレス指標には唾液中αアミラーゼ活性(AMY値)をもちいた. <結果1> 課題タスクの[正答率]はclose条件においてopen条件より高い有意傾向が示され,[反応時間]はopen条件ではclose条件よりも有意に速い傾向が示された.[生理指標]ではopen条件において実験直後のAMY値が10分後,20分後よりも有意に高い傾向が認められたのに対して,close条件ではどの段階も有意ではなかった. <結果2> 学習者を社会的スキル高低の2群に分けて分析した結果,[正答率]では高群は低群よりも有意に好成績であり,[反応時間]では高群は低群よりも回答が速かった.[生理指標]では,close条件において交互作用が有意となり,低群においてのみ実験直後が20分後よりも有意に高かった. これらの結果より,課題タスクの遂行において,(1)他者に成績を開示されるopen条件ではストレスが高く,(2)社会的スキルの低い学習者は,成績が開示されないclose条件であってもグループでの学習活動場面に心理的負荷を感じ,「他者の存在」を意識することによってパフォーマンスが影響される可能性が示唆された.
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