研究概要 |
平成25年度は,協同・協調的な学習場面を想定したストレス実験を継続して実施した。ストレス測定には,質問紙と面接調査による心理的ストレス評価,および生理的指標として,脳血流量,視線追尾,唾液中αアミラーゼ活性(sAA値)等をもちいた。今年度は,これまでの実験結果を踏まえて,ストレス場面にコンピュータが出題する精神作業課題(暗算課題)の遂行を同室内で他者に直接観察される条件と,モニター画面を通して別室から映像と音声を観察される条件の設定を加えた。追加した両条件は,いずれも他者に課題遂行の様子や成績をリアルタイムで観察される場面であり,実験参加者の社会的自己が脅かされるSET(社会評価脅威文脈)条件であったが,分析の結果,同室で直接観察される条件において,より心理的・生理的ストレスが高まる傾向が示された。このことから,学習場面の社会的文脈だけでなく物理的な作業環境そのものの影響について議論した。また,今年度は最終年度となるため,これまでの研究総括を行い,EDAR42(Hirata, Ishikawa, & Mazumdar, 2011)およびICIRE(Hirata & Ishikawa, 2012)の発表データについて,実験参加者の認知や個人属性によるストレス反応の差異について追加分析を行って検証した。その結果,課題成績の優劣や文脈の捉え方(競争場面で他者に自らの能力を低く評価される,協同作業場面で他者に迷惑を掛けてしまう,等の懸念)や課題に対する志向性等が学習者のストレスに影響する可能性が示唆された。
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