思春期から成人期前期に発生するがんは、幼児期や成人期後期とは異なる独自のパターンを示すことが分かってきた。本研究では、思春期の放射線被ばくがその後の化学発がん物質に曝露したときどのように影響するのか、放射線と化学発がん物質との複合曝露における「曝露のタイミング」に着目し、発がん率や発がん機構の変動を明らかにすることを目的とした。化学発がんにおいて、過去に被ばくした放射線がどの程度後まで影響するか明らかになれば、放射線と化学療法を併用したがん治療における二次がんの問題や、小児期の放射線被ばくと成長してからの化学発がん物質曝露による影響について、リスク評価やリスク低減化への提案につながる可能性も期待できる。 これまでの我々の研究から、4週齢B6C3F1マウスにX線を照射し、3日後から化学発がん物質エチルニトロソ尿素(ENU)を投与した場合、胸腺リンパ腫発生率は96%であるが、4週間の間隔を開けた後にENUを投与すると60%に低下することがわかっている。 22年度は、4週齢B6C3F1マウスにX線を照射した後、2週間または8週間の間隔をあけてからENUを投与し、胸腺リンパ腫発生率の違いを調べた。現在までの胸腺リンパ腫発生率は、2週間隔の群で98%(49/50)、8週間隔の群では60%(30/50)である。胸腺リンパ腫を発症したマウスは全て解剖し、サンプルを分子解析用に保存した。残りのマウスについては、飼育・観察を継続中である。 23年度は、得られた胸腺リンパ腫サンプルについて遺伝子解析を開始する。
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