研究概要 |
生物試料等の吸収の少ない試料をX線で観察する場合、試料による位相変化を観察する方が吸収よりもはるかにコントラストが向上する。これを位相トモグラフィーへ応用する場合、位相の定量化が不可欠である。本研究では、放射光偏向電磁石光源 Photon Factory BL3Cを用いたゾーンプレートX線顕微鏡での定量的位相結像及びそのトモグラフィーへの応用を目的としている。これまでの実験では、ゾーンプレート後焦点面にナイフエッジ走査フィルターを用いることにより、微分位相像の結像、及び位相トモグラフィーへの応用に成功した。しかし、エッジのスキャン幅によって位相値が大きく変わる等の問題があった。 今年度はエッジスキャン幅を考慮した位相再構成式を導出し、エッジ走査幅を考慮した再構成プログラムを開発した。その結果、ポリスチレン球の位相トモグラフィー再構成をHenkeのテーブル値と比較したところ屈折率の誤差11%、標準偏差5.4%の値が得られ、この方法でX線位相の定量的な再構成が可能であることを初めて示すことができた。また、軟骨組織等の生物試料の位相トモグラフィー観察を行い、本手法でこれらの組織の3次元観察が可能であることを示すことができた。これらの結果はX線顕微鏡国際会議のプロシーディング(Journal of Physics: Conference Series, in press)で公表される予定である。
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