研究課題/領域番号 |
22611004
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
高田 義久 筑波大学, 数理物質系, 教授 (00134205)
|
研究分担者 |
河野 良介 国立がん研究センター(研究所および東病院臨床開発センター), 粒子線医学開発部, 研究員 (20392227)
|
キーワード | 陽子線治療 / 照射技術 / モニターユニット / 線量校正 / 線量計算 / 簡易モンテカルロ法 / 照射野サイズ補正 / 線量計測 |
研究概要 |
補正係数CFを、毎日の温度・気圧を補正するため定められた条件で測定を行う標準測定での線量較正値CALF_<ref>を基準として、患者毎の照射中心線量の違いを補正する線量較正値CALF_<pat>との違いを補正する係数と定義する。つまりCF=CALF_<pat>/CALF_<ref>である。CFを求めるために我々はCF_1とCF_2に分けた。CF_1はビームのエネルギー、レンジシフト量、SOBPの幅に関係する補正係数、CF_2はボーラス、患者コリメータ、スノート位置に関係する補正係数である。CF1は組み合わせの数が限られるため、サンプル測定と補間により容易に精度の高いデータを得ることができる。次にCF_2については照射条件毎に異なるために高精度な線量予測が期待されるSMC法(簡易モンテカルロ法)を用いて計算した。以上の方法を用いて、実際の照射条件7つに対してCFの測定を行い、我々の算出法で求めたCFと比較したところ、3%以内の精度で算出することができた。一方、開口幅50mmよりも小さな照射野に対して生じる照射野効果(照射野が小さくなると照射中心の線量が減少する効果)が観察された。また、陽子線のエネルギーが235MeVの場合には、開口幅50mmより大きな照射野に対しても、照射野効果を観察した。この照射野効果をSMCの計算モデルでは精度よく再現することができないという課題が残った。この照射野効果がCFの計算精度に影響する。そこで我々は正方形コリメータを使った照射野効果の測定データを使って不整形の患者コリメータによる照射野効果を見積もる新たな方法を開発し、この方法を使って照射野効果の補正係数を計算した。こうして求めた照射野効果の補正係数を前立腺がん照射の2つの門の照射条件に適用したところ、計算と測定の違いが3%から±1%と誤差の範囲内に収まることが分かった。今回調べた7つの条件で、このSMC計算に照射野効果補正を適用するとCFの計算精度は、ほぼ誤差範囲内でCFの測定値と一致した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去に実際に行われた3つの陽子線治療症例に対し、今回開発した方法により、約1%の精度で測定した患者測定の線量校正値を再現できた。課題としては、小さな照射野サイズの場合に問題になる照射野サイズ効果を、線量計算モデルであるSMC法が必ずしも良い精度で再現できておらず、現在、照射野サイズ効果は複数の開口サイズを持つ矩形のコリメータに対する測定をにに補正する方法をとっている。計算モデルには改善の余地がある。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、更に多くの症例に対して本方法を適用し、その精度を検証することが重要と考える。また測定データに基づく照射野サイズ効果補正の精密化を考える。また、一方で計算モデルの改善を行って、実測値の再現精度を改善する努力をする。
|