研究概要 |
脳動脈のMRA画像データを効率よく処理するために,研究分担者の増谷らが開発した汎用のコンピュータ支援診断システムを導入し,MRI装置で撮像された画像データを同システムに転送して血管形状の解析を行う環境を整備した。 別途,サンプルのMRA画像データ10例(正常群5例,動脈硬化群5例)を用いて,内頸動脈サイフォンの血管形状解析を行うプログラムを開発した。解析にあたっては,画像データ内の対象となる部分を手動でROI設定し,一定閾値以上のボクセルを計測対象とした。これらのボクセルにおいて,多値モルフォロジ処理により15方向のサイズ計測およびテンソル近似により,同テンソルの3つの固有値(L1,L2,L3)を求めた。サンプルデータにおいて,対象ボクセル全ての固有値を求め,(L2,L3/L2)の連合ヒストグラムを得たところ,正常群と動脈硬化群で差が認められた。この連合ヒストグラムにおける分布の広がり・まとまりを数値化して,これを血管形状不整指標とした。サンプルデータでこの血管形状不整指標を計算したところ,正常群・動脈硬化群で有意差が認められた。 MRAのデータを用いた血管形状解析としては,動脈瘤の形状解析などがこれまでに報告されているが,動脈硬化による血管形状不整を数値化した試みはない。今回求めた指標をさらに検証・改良し,信頼性のある指標として確立することができれば,動脈硬化のバイオマーカーとして使用することが可能となり,治療戦略・治療効果判定などを行う上で有用であると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主目的は,動脈硬化を反映した血管形状不整を数値化することである。今回,少ないサンプルデータながらも,二群間で有意差のある指標を求めることができたため,上記の達成度とした。
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今後の研究の推進方策 |
症例数の増加,複数の人間による視覚的評価との比較,などを行うことにより,今回求めた血管形状不整指標が信頼に足るものであるか否かを検討する。また,指標を簡便に求めるために,処理を自動化するプログラムの開発を同時に進行する。
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