本研究の目的は、粒子線がん治療計画において不均質部補正のための必須入力データである電子密度の絶対測定が可能な2色X線CTを、医用X線源を用いて実現することである。本年度は、「バランスドフィルタ法を組み合わせた2色X線CT装置」のプロトタイプ((1)一般撮影用X線源、(2)被写体自動回転ステージ、(3)X線ラインセンサカメラ、(4)バランスドフィルタで構成)を作製するとともに、そのビームパラメータの理論的最適化を試みた。また、通常のデュアルエネルギーCTとのビームハードニング効果低減に関する能力比較も行った。バランスドフィルタ法とは、互いに近いエネルギーの吸収端を持ち、かつ厚さを適当に調整された2種類のフィルタを使い、各フィルタを透過したX線強度の差分処理によって、両吸収端に挟まれたエネルギー領域のX線のみを得る準単色化法である。X線ビームの線質は、'使用するフィルタの種類や使用管電圧といったパラメータによって決定づけられる。本研究では、直径50cmの円筒状水ファントムを被写体としたCTスキャンを想定し、ビームハードニング効果による電子密度および実効原子番号の誤差を評価するfigure of merit (FOM)が最大になるようビームパラメータの最適化を行った。その結果、80kVおよび140kvの管電圧においてFOMを最大かつx線出力を最小とするTb/HfおよびBi/Moが最適なバランスドフィルタの組み合わせの一つであることが分かった。
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