本研究では、まず、日本人の乳幼児体型を模した人体等価ファントムを作製し、次に、そのファントム内部に小型の放射線検出器を多数配置した乳幼児臓器線量計測システムを構築、最後にそれらを用いて、臨床で目常的に実施されているX線CT検査での乳幼児の被ばく線量を測定・評価することで、現在日本の放射線医学分野で最も問題となっている乳幼児の医療被ばくの実態を調査・解明することを目的としている。 平成23年度に、本研究で独自に設計・作製する予定である乳幼児人体等価ファントムは、乳幼児患者の放射線診断画像から各パーツの形状を計測することで、その形状を決定することにした。具体的には、名古屋大学医学部生命倫理委員会の承認(承認番号:52)を得た後、過去に名古屋大学医学部附属病院でX線CT検査を受診したことがある患者データから、1歳児と3歳児の画像データを抽出した。それぞれのCT画像は、ヘッダ情報を匿名化した後、一患者あたりCD-R1枚にコピーされた。画像解析ソフトウエアZioTerm2009を使用し、収集した各検査部位の2D、3D画像から、骨格や臓器形状等の解剖学的体型データ(頭頸部61、胸腹部171、骨盤部64か所)を測定し、それぞれの平均値を求めた。これらの数値データを基に、1歳児と3歳児の人体等価ファントムの設計を行った。一方で、先行研究で既に調査を進めている0歳児と6歳児の各種CT検査における被ばく線量調査も引き続き行った。次年度は、3歳児の人体等価ファントムの作製と臓器線量計測システムの構築を行う予定である。
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