研究概要 |
放射線治療では,治療計画を放射線腫瘍医の経験に基づき決定しているが,放射線腫瘍医間の治療計画のばらつきが大きく,治療成績のばらつきの原因になっている.また,経験の浅い医師にとっては治療計画の時間がかかり,難しい作業である.そこで,治療計画例を提示することで,治療計画を支援するシステムが望まれている.本研究では,放射線治療計画データベースに保存された類似治療計画症例を自動検索し,提示するシステムの開発を試みている.今年度は過去に計画された類似症例に基づき、治療ビーム方向を自動的に決定する治療計画支援システムを開発した.類似症例は81症例の肺定位放射線治療計画データベースの中から自動的に検索された.初めに,PTV (planning target volume),肺,脊髄の位置,大きさ,形状に関する幾何学的特徴量を算出し,対象症例と類似した5症例を検索した.次に,肺領域をレジストレーションする変換行列を用い,類似症例のビーム方向を変換することで,対象症例のビーム方向を決定した.自動的に決定された5つのビーム方向を用いて治療計画システム上で5つのプランを作成し,Confbormityindex,肺の平均線量や,脊髄の最大線量等の8種類の線量評価指標を用いて,最も有用と考えられるプランを自動的に選択した.提案手法を評価するために,10名のテスト症例に本手法を適応した.提案手法に基づくプランと放射線腫瘍医がマニュアルで作成したプランの線量評価指標を比較した結果,8種類の線量評価指標において有意な差は無く,同程度のプランを自動作成できる可能性を示した(P>0.05).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
治療計画と関連する画像情報を用いて,類似治療計画症例を検索するだけでなく,過去の類似症例の治療計画情報を積極的に利用して,新たな症例のビーム方向を決定できる放射線治療計画支援システムを開発した,開発した手法は国内外の関係学会において高く評価され,SPIE Medical Imaging 2012(2012年2月,アメリカ,サンディエゴ)にてConference Finalist of the Best Student Paper Awardと11th Asia-Oceania Congress of Medical Physics(2011年10月、福岡)にてSecond Placein Young investigator Symposiumを受賞した。
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今後の研究の推進方策 |
提案手法の更なる向上のため,線量分布評価指標のコスト関数を用いて,類似症例に基づいて決定したビーム方向を最適化するアルゴリズムを開発する. 商用の放射線治療計画装置に提案システムを組み込み,臨床の現場で開発したシステムの評価を行う予定である.さらに,出力結果を放射線腫瘍医に提示し,治療計画にかかる時間がどれだけ削減できるか観察者実験を行う予定である.得られた成果は,英語論文にまとめ,臨床実用化を目指す。
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