研究概要 |
本研究が目的とする放射線検査における被ばく線量の最適化のために,もっとも単純で有効と考えられる方法は,同一の患者に線量の違うレベルで放射線検査を実施し,その診断能の違いをROC解析等で評価することである.しかし,こういった実験方法は倫理的に不適当で,現在の医療社会において行うことは不可能である.そのため,本研究では,病院等に保管されている過去に行われた無数のCT画像データから,ディジタル人体ファントムを形成し,シミュレーションにより放射線検査を実施し,同一のディジタル人体データから,放射線量のレベルの設定の異なるX線画像(Digitally Reconstructed Radiograph : DRR)を模擬的に作成する手法を開発してきた.DRRは本来,放射線治療の分野で治療計画時に撮用いたCT画像と治療時に得る照合用X線写真の一致性を評価するために開発された手法であるが,本研究では,一般撮影における幾何学的アライメントや撮影画像データの70%以上を占める散乱線成分を模擬的に付加することで,一般撮影で得られる画像に近いDRRを作成する手法を開発した.平成22年度の研究では,主に人体ファントムを用いた基礎的な評価を実施したので,現時点では,本手法で作成されたDRRの臨床的有用性は実験的に証明されていない.今後,ROC解析等により,被ばく線量の評価におけるDRRの有用性を推し進める.また,平成22年度は,上記の研究と並行してROC解析の実験方法の最適化に関する検討を行うことで,次年度のROC解析実験の準備作業とした.
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