研究概要 |
平成23年3月に発生した東北大地震に伴う福島原子力発電所事故は,国民の放射線に対する危機意識を新たにした感がある.これまで,医療のためということで軽視されてきた放射線検査による医療被ばくについても,放射能による環境汚染の比較対象として政府やマスコミの表現に用いられたことから,これまで以上に国民の関心が高まってきた.医療被ばくの最適化が本研究の主たる目的であるが,侵襲的な放射線検査においては,患者を研究対象として被ばく線量の最適化を行うことが不可能である.そのため,本研究では病院に保管されている膨大なCT画像データからディジタル人体ファントムを形成し,そのディジタルファントムから得られたシミュレーション画像を用いることで医療被ばくの最適化を試みてきた.放射線画像の質は,最終的には医師の読影によって病変部が見落されるかどうかに依存するので,その最適化のためには,撮影時に照射する放射線量を低減し,その結果として,医師の病変の見落としの可能性が無視できるレベルを確定することである.そして,その評価を行う手法としては,現時点ではROC解析がもっとも適していると考えられている.しかし,統計的な理論や統計処理ソフトウエアは存在するものの,ROC実験に必要な知識をまとめた教科書的な文献もソフトウエアも存在しないのが現状であった.そこで平成23年度はROC解析に必要なソフトウエアの開発を主に行い,それと同時に平成24年度に実施するROC実験の詳細について検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年3月に発生した東北大地震に伴う福島原子力発電所事故によって生じた国民の放射線に対する不安を軽減するため,所属する日本放射線技術学会における活動のための時間が予定以上に多くなったため.また,原発事故で避難した住民の一時帰宅の際にもボランティアとして放射線計測業務に参加したため,ROC実験の実施が当初の予定よりも遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
ROC解析を実施するためのソフトウエアは完成し,あとは被ばく低減の最適化のためのROC実験を実施するだけである.当初予定していたディジタル人体ファントムからシミュレーション画像を作成する方法では,時間が足らないので,すでに撮影されたCT画像データの中から被ばく線量の異なるグループごとにデータベースを作成し,ROC実験を実施する予定である.
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