研究課題/領域番号 |
22611015
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
伊藤 敦 東海大学, 工学部, 教授 (80193473)
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研究分担者 |
石井 直明 東海大学, 医学部, 教授 (60096196)
平山 亮一 (独立行政法人)放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 研究員 (90435701)
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キーワード | 重粒子 / DNA酸化損傷 / 免疫染色法 / 8-OHdG / 酸素効果 / トラック構造 / クラスター損傷 |
研究概要 |
1.8-OHdG生成の可視化方法の検討 昨年度行った8-OHdGが検出しやすいマウス組織のサーベイで得られた脳を主体にさらに実験方法の簡略化を目指した。灌流の作業工程はかなり時間を要するため、8-OHdGの修復などに影響を及ぼすと考えたためである。そのためマウスを生きたまま照射し、直後安楽死させ、すぐに脳を摘出し、固定した。Fe照射のみの結果ではあるが、灌流試料より血管は目立つものの、ポジコン試料、照射試料ともにコントロール試料とは明らかに異なった画像が得られることがわかった。 2.8-OHdGクラスター損傷の修復の検討 ヒトHL-60培養細胞を常酸素下にて4℃で照射後、37℃でインキュベーションを行い生成された8-OHdGの修復時間依存性を求めた。照射後8-OHdGは単調に減少すると予想されたが、結果は照射後に一時的に収量が増大後減少した。増大の原因は不明であるが、減少後の60分での修復率は、LETの増加に伴って低下する傾向がみられた。この結果は、高LETで生成された8-OHdGは修復されにくいことを示唆しており、8-OHdGがクラスター状に生成されたと考えることができる。 3.DNAフィルムの作成方法の検討 8-OHdGの広がりをより定量的に可視化するため、DNAフィルムを照射し、生成した8-OHdGを免疫染色検出する方法を22年度から模索してきた。23年度は、脂質とDNAの複合体を有機溶媒に溶かし、テフロン板上にキャストすることによって、水に不溶性のDNAフィルムを作成した(東工大岡畑教授より)。このフィルムは、DNAが4nmの間隔で密に並んでおり、その間隔が8-OHdGの生成領域より十分に小さいこと、水中で保持することにより水由来のOHラジカルの作用を検出できることなど、本研究への適用において利点を有している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス組織の免疫染色に関して、照射機会が年数回と少ないこともあって、予定よりやや遅れている(これについいては(3))。8-OHdGを指標とした塩基クラスター損傷の修復については、興味深い結果が得られ、こちらについてはほぼ順調に進展している。DNAフィルムについては、より有効性の高い方法を見つけることができたので、予想外の進展と考えている(これらについては(2))。
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今後の研究の推進方策 |
8-OHdG可視化に関して、24年度はマウスと並行して、DNAフィルムを用いた免疫染色法に力を入れる予定である。23年度は、UVクロスリンカーによるプロッティング膜へのDNA固定法に加えて、さらにDNAフィルム作成法の検索を行い、水中でも不溶性のDNAフィルムの作成法を東京工業大学岡畑教授より伝授いただいた。このように複数の系を用意して8-OHdG免疫染色法の適用性を検討することによって、in vitroでの高LET放射線の酸化損傷の可視化を実現させたい。
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