ガンマ線レンズを用いた医療用イメージング装置高度化のための基礎研究として、平成22年度はガンマ線レンズの基礎性能を評価するための準備を、実験、理論の両面から進めた。 実験面では、ガンマ線レンズ用素材としてゲルマニウム単結晶を複数種類準備した。これらのレンズ素材は、結晶方位、厚さ、表面処理等がそれぞれ異なるものである。レンズ性能の評価実験用セットアップとして、これらのレンズ素材を任意の角度に固定配置し、標準線源によるガンマ線を屈折させてガンマ線検出器に到達させる装置を構築した。あわせて、屈折測定用のガンマ線検出器の準備も進めた。ガンマ線検出器としては、エネルギー精度の高いゲルマニウム半導体検出器(既存)を用いるが、ガンマ線レンズの効果を精密測定するためには、数日から数週間の比較的長時間の測定が必要となる。そこで長時間測定の際の温度変化等の影響を受けずに測定を行える、デジタルベースの信号処理系を準備した。この測定系では、信号処理に伴うデッドタイムを長時間にわたり精確に計測できるとともに、測定中の温度変化を随時記録できるようになっている。これらのセットアップを用いて現在、ガンマ線レンズ効果の精密測定の前段階として、測定系の安定性等を確認するための試験測定中である。 また、理論面でも、レンズにおけるガンマ線の屈折精度、エネルギー精度における、結晶格子の熱振動による影響の計算を行った。さらに、ガンマ線レンズを、陽電子断層撮像装置(PET)、単一光子放射断層撮影装置(SPECT)、コンプトンカメラに組み込んだ際の効果を検証するための、モンテカルロ法によるシミュレーターの製作を行った。
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