研究概要 |
今年度は、セルロソームを再構築するために必要な酵素遺伝子を探索するために、多糖類に対するプロテオーム解析を京都大学大学院農学研究科の黒田准教授と共同で行った。炭素源にセロビオース、結晶性セルロースであるアビセル、ヘミセルロースであるキシランを用いて、セルロソーム構成タンパク質のプロファイルを明らかにした。この結果、既知のセルロース分解関連酵素だけでなくペプチダーゼやペプチダーゼインヒビター、機能未知のタンパク質が生産されていたという興味深い知見も得られた。 酵素サブユニットが結合する足場タンパク質であるCbpA,CbpB遺伝子をサブクローニングした。はじめに組換え体を用いてもセルロソームを再構築することが可能か調べるために、大腸菌の発現系を用いてCbpAよりも小型なCbpBの組換え体と上記のプロテオーム解析からセルロソームを形成することが可能な酵素サブユニット(EngH, EngL, ManA, ManGh26C, XynA, XynB, XynGH8, Pell, PelA)を作製した。CbpBに関しては、糖質結合モジュールが含まれているので結晶性セルロースに対する結合力の評価を行った。その結果、K_<d>値は、0.82μMと比較的強い結合力を示した。セルロソームの再構築の検証は、酵素サブユニットが結合しないN末端側にグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)が付加した融合タンパク質を調製し、GSTが付加したCbpBと酵素サブユニットの結合力の有無をGSTプルダウンアッセイで検証を行ったところ、XynBはCbpBに結合することが確認された。ManAに対しても同様の結果が確認されており、作製済みの他の酵素サブユニットについても現在検証を行っている。以上の結果からCbpBは、結晶性セルロースに強固に結合し、酵素サブユニットとも結合することができる。よってC.cellulovoransは、足場タンパク質にCbpAを含む巨大なセルロソームを構築するだけでなく、1種類の酵素サブユニットを搭載可能な足場タンパク質であるCbpBを含むセルロソームを発現することが明らかになった。現在、ブタノール生産菌であるC.acetobutylicumに対してもCbpA, CbpB遺伝子を組込んだ発現プラスミドを構築し、形質転換を行っているところである。
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